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最高裁判所大法廷 昭和23年(れ)431号 判決 1948年12月27日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人小田良英の上告趣意第一點について。

論旨前段は、原判決において檢事の聽取書を證據に引用したのは憲法第三八條第二項並びに刑訴應急措置法第一〇條第二項に違反したものであるというのであるが、記録に徴するに、右檢事の聽取書が強制拷問もしくは脅迫によって作成された形跡は認められないし、右檢事聽取書は、被告人が警察署に任意に出頭した日より一五日を經た昭和二二年五月六日に作成されたものであるが、被告人が勾留されたのは、同年同月二日であるから、勾留された日から四日の後に作成されたのであり、右檢事聽取書記載の被告人の供述は、不當に長く拘禁された後の自白であるということは當を得ない。次に原判決は、右検事の聽取書のみによって被告人の殺意を認定したものであると非難するのであるが、原判決は右聽取書の外に被告人の原審公判廷において供述した被害者殺害の方法並びに兇器の存在等を総合して認定したものであることは、原判決擧示の證據によって窺い知ることができる。論旨は理由なきものである。なお論旨後段は、檢事の聽取書は、訊問調書でないから、刑事訴訟法第三四三條により證據とすることはできないと主張するのであるが、同法は刑訴應急措置法第一二條第二項により適用されないことになったのであるから、所論檢事の聽取書について適法なる證據調をなし、これを證據に引用した原判決は所論の如き違法はなく、論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって刑事訴訟法第四四六條により主文のとおり判決する。

以上は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 栗山茂 裁判官 真野毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介)

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